山崎さんについて
この方が山崎さん。来年で八十歳になるおじいさん。
私の大切な友達だ。
山崎さんとあったのはとある演劇のワークショップだ。
それをきっかけに山崎さんと交流をもつようになり、さらに芝居をしようと地元北九州から東京に出てくるきっかけともなった。
その後、ドイツ人女性の映像作家と出会いこの山崎さんと三人で映像を撮る事になった。おじいさんと外人女性と二十歳そこらの青年が三人でつるみ北九州の街や人々と関わる様は客観的に見てとても奇妙だったと思うし、その思い出が私にとっても大きな誇りになっている。
そんな経験をともにした山崎さんとは帰郷した度にJOYFULというファミレスで何時間も話している。
地元にいた頃から週に2、3回はこのJOYFULにてドリンクバーのみで猥談していた。
今回も山崎さんがTVタックルの3時間スペシャルが見たいという理由で22時から話し始め0時半くらいまで話した。
来年80になるおじいさんに何をさせてんだと思う方もいると思うがそれが彼の願いでもあった。
山崎さんに会う前に祖父母と会い、二人とも昔の元気な姿ではなくたった一年で腰を曲げ杖を使うようにまでになっていたので山崎さんに会う前も少し不安だった。
そんな不安は杞憂で、彼は前以上に姿勢がよくいつもの笑顔を私に見せてくれた。
第一声は
「おー、ますますアーチストになったなー。あーうれしいなー」から始まった。
その後ジョイフルに入りドリンクバーを頼み彼の好きなホットコーヒーに昔の記憶を思い出し二本の砂糖を持って行った。
話はもっぱら芝居の話。
彼が最近でたショートムービーや舞台の話、私がこの前まででていた芝居の話をした。
彼は私と参加したワークショップから色んな舞台に参加し新聞やTVに取り上げられるほどになっていた。
その陰には彼は、あらゆる舞台のオーディションに応募しまくっているらしい。
私とは大違いだ。
そんなばつの悪さも吹き飛ぶくらいに彼の話は弾むのでこっちも元気が出てきた。
こんな俺が言うのもおこがましいが彼の演技は決してうまくはなく80近いおじいさんだけに何言ってるかわからないときもあるが涙が出そうになる。
彼の持つひょうひょうとした自由な雰囲気と、思いやりのある人間性が舞台上でそのまま反映される。
と、こんなことを思いその場で彼に伝えるとまた止めどなく話しだす。
こんな元気で素敵なじじいはなかなかいない。たいてい老人会なんかで同年代の老人に孫の自慢をしているか、隣人の愚痴を言っているかだ。
25のにいちゃんとと若者だらけの深夜のファミレスで猥談している80前のじじいなんてそうはいまい。
アラウンドエイティーじじいは終止芝居の話をして私が帰りますかと言わなければもしかしたら朝まで話していたかもしれない。
会計を終え外は雨で、彼の車のあるところまで見送りに行くと彼は急に私の手を強く握り
「がんばりなさいよ。あなたはまだ若いんだから」と言って笑顔で去って行った。
私は目頭が熱くなって「はい。山崎さんもお元気で」と言い車に向かい車の気をさしエンジンをかけると急に涙が出た。