お見舞い

以前、日記で紹介させてもらったY先輩が怪我をして出演する筈だった舞台の降板を余儀なくされたという事でお見舞いに行った。http://d.hatena.ne.jp/yokkukku/20091124/1259075715

劇団の研修生時代の友人K口君と待ち合わせ電車で先輩の実家の国立市の矢川という駅まで行くと、Y先輩が駅まで車で迎えにきてくれた。

降板するほどの怪我の中以外と元気があるなと思ったがそんな野暮なことは口にせず、「お疲れさまです」と笑顔で挨拶をした。以前俺も怪我をして残り一ヶ月の公演期間を棒に振った悔しさを知っているからなおの事だった。

Y先輩は右足の動脈を切っていて左足で運転をして迎えにきてくれた。意外に元気があるなんて思った自分にげんなりした。

中々出歩けないという事で映画を借りたいと要求してきたので運転を俺がしてレンタルビデオ屋に行って、それから家に食材がないという事でスーパーで食材を買った。

車では俺もK口君も怪我の理由とか全治何か月とかは聞けないでいた。
役者にとって足が使えない事は致命傷ということを知っていたからだ。
Y先輩は劇団でも主役級の役ばかりで今後の活躍も期待されていた。

先輩の家に着くと、玄関からリビングに続く廊下にはアンティークが所すましとおかれていた。その廊下を進むとY先輩の両親が笑顔で迎えてくれた。感じの良くて美人なお母さんにお洒落なお父さんだった。

軽く挨拶と自己紹介を済ませ先輩の部屋に入った。
先輩の部屋は家を出て行った子供の部屋だった。テレビ、ベッド、棚、昔のMDプレイヤー。最低限の物しかなかった。

部屋には劇団時代の演出家が栃木のロケの時かわいそうだから拾ってきたという黒猫が居た。猫も元気そうで何よりと思った。

Y先輩は怪我の事について話してくれた。

転倒して何かが足に刺さって動脈と神経を切断してしまったらしい。
しかも出血多量でもう少しで死ぬところだったとの事を笑いながら話してくれた。
ただ、神経が無事つながるかどうかはまだわからないみたいだった。
真剣に芝居に取り組んでいたのを見て来ただけに心が重くなった。俺もK口君も「そうですか」としか言えなかった。その後、しばらく沈黙が続いた。

沈黙が続いた後、夕飯の支度ができたので三人でリビングに向かった。
久々の家庭料理はひもじい生活をしているので嬉しかったが、見舞いに来てるのにこんなにもてなされて複雑な気持ちになった。

最初は遠慮がちに食べていたが、Y先輩のお父さんに「若いやつはもてなされたら腹一杯食べんと駄目」と言われたらふく飯を食った。

K口君はY先輩のお母さんと気があったみたいで花とか宇宙人の話をしていた。

その会話が面白かった。

Y母「宇宙人を見たいんですよね」

K口「そのうち会えます。会いたいと思ったらそのうち会えます。」

Y母「そう言えばこの前光の走りが不思議な物体の物をjはんふぉい;f」

K口「ええ。なるほど。見たんですか?」

Y母「はい。動きが全然違いますよね。そうなると。飛行機とは。」

K口「そうそうそう。」

Y先輩「なんか人の後ろのオーラとかも見えるんだよね?」

Y母「うん。」

Y父「えー、うっそー。本当にそんなの見えるの?」

Y母「見えるのよねー。」

K口「あー第三の目ですね。」



みたいな、かなり一般の人では理解しがたい会話が続いたが面白かったしとても居心地が良かった。

サッカーの試合が終わる頃においとまする事にした。

歩いて帰るって言う俺たちにY先輩は車で送らないと気が済まないと言うのでおくってもらった。

帰りの車の中でY先輩は両親について色々話してくれた。

「最近だよ。あんなに話すようになったのは。一回離婚してたんだよ。親父が美容室たたむまではほとんど家に帰ってこなくて母子家庭みたいだったから母さんも気性が荒くて家庭がバラバラだったもんな。親父も未だ俺に何話していいかわからないようなとこあるし。年取ると穏やかになるんだね。」


駅に着くと「またね。今日は本当にありがとう」と言って俺たちが背を向けるまで手をかざしててくれた。




Y先輩がまた舞台や映画に出れるのを心から祈っています。