いぬのきもち2010

今日は泣いた。

泣いた事なんてとてもプライベートな事なんで書くか書かないか迷ったが書く。
昔、アラーキーが写真はその人に思い切り近づくか、遠ざかるかって言ってた事を思い出し書く事にした。

今日久しぶりに別れた恋人にあった。
その人とは高校の頃につき合いだし長い事一緒にいた。
久しぶりに会うと何かとても綺麗になったと感じた。
良く二人でカラオケに行ってたので、行こうと言う話になった。
今まで普通に歌ってた曲を歌うとどれもこれも別れだの、恋だの曲にしたものばかりでなんか複雑な気持ちになった。




つき合ったきっかけは私からの一目惚れだった。
私の高校は新設校で自由な校風で服装や髪型も自由だった。
田舎ではそんな高校は初めてだったので、他校の生徒にはとてもうらやましがられた。

その為、みんな入学すると髪を染め出しピアスを空け好き放題しだす。
私も髪の毛を金髪にしたりピアスを空けたりしたが、私が女の子に求めていたのは髪を染めたりピアスを空けた派手さではなく素朴な綺麗さだった。

そんなある日、学校の階段の踊り場で初めて彼女を見かけた。
髪の毛が長く、とても素朴で綺麗だった。髪の毛がパサァーってなびいて、何かシャンプーのCMみたいだったのを覚えている。多少、美化してるかもしれないけど。

その頃から彼女の事が気になりだした。
ただ、その頃の僕はとても奥手で女性のどうアプローチしていいかわからなかった。
その上、思春期特有の気取りもあり真面目な子よりも派手な女の子にアプローチをしようとして、結局「なんであんな子気になったんやろ」って事になってしまう事が多かった。

時間は過ぎて、その年の秋の初めにようやく彼女と話す機会があった。
友達が彼女と友達で、帰りの電車が一緒になった。
僕は自分を良く見せようと舞い上がりたくさん話した。
この時の事を彼女は髪の毛は金髪で格好もチャラくて嫌だったって言っていた。
でも、私はそんな事も知らず家に帰ると布団の上にうずくまり音楽を聴き彼女の事を思っていた。

それから、少しずつ話すようになった。
私はその頃、本なんて読まなかったが彼女が図書館で勉強してたので通った。
髪の色も落ち着かせ彼女に告白した。しかも童貞の奥手だったからメールで。
結果は見事にふられた。

その後も懲りずに図書館に通い彼女に会いに行った。
ほとんどストーカーみたいだったが人のいい彼女は何の気兼ねもなく話をしてくれた。なので再度告白した。
結果はまたもやふられた。

そんな事を何度か繰り返すうちに春が来た。
その頃にはメールを頻繁にする仲になっていた。
2001年4月1日、彼女の地元に遊びいくねってメールした。彼女はエイプリルフールの嘘だと思ったらしく「嘘やろ?」とメールを返して来た。
私は昔からサザンオールスターズ好きで「思い過ごしも恋のうち」って歌があったから思い切り電車で40分かけて彼女の地元に言って見る事にした。

駅に降りると春なので稲穂の良い匂いがした。
思い切り田舎で一日にバスが3本しかなかった。歩いたら1時間くらいかかるらしいのでかなり困った。
なのでヒッチハイクをする事に決めた。
田舎なのでなかなか車が来ない。その少ないチャンスをつかむ為に一つ演技をした。
何十分も待ってたような疲れたポーズで待ち、車が近づくと屈託のない笑顔で親指を天に掲げた。
これは優しい田舎の人に響いた。すぐに感じのいい家族が捕まった。
やっぱりいい演技は切実さから生まれる。

ようやく彼女の地元に着いた。
さっそく着いたよ!と電話すると彼女は「嘘やろ!すぐ行く!」と言い近所の名前も聞いた事ないようなコンビ二で待ち合わせた。
彼女だけかと思ったら、小さい女の子もいた。彼女のいとこでその頃はまだ小学校一年生だった。今はもう高校生だ。

彼女は驚いた様子で「本当来たんやん」と言い、私も「本当来たよ」と言った。
その日は小さい女の子を肩車してやりながら田舎道を歩いたり、三人でつくしやふきのとうを摘んだりした。
帰り際に「そろそろつき合っとんやない?」と僕が言うと、彼女も「そーやね」と言った。

私達は正式につき合う事になった。嘘のような本当の話。

帰りは一時間の道をビニール袋に入ったつくしを持って歩いた。
家に帰りまた布団の上にうずくまり音楽を聞きながら彼女の事を思った。


それから、私たちは毎日のように一緒にいた。とても幸せだった。
しかし、問題があった。私は別の高校を中退して再入学おり、同い年だが一学年彼女より下だった。
つき合いだした年、彼女は受験生だった。先に卒業してしまう。

看護士になる為、彼女は受験勉強を始めた。俺も一緒に図書館で勉強する振りをした。彼女には随分迷惑をかけたと思う。

私は彼女が県外の大学に行く事がとても怖かった。

しかし彼女は広島の看護大学に通う事になった。4年間は遠距離だ。その時も随分泣いた。夜通し泣いた。

新学期が始まり私は始業式をすっぽかしヒッチハイクで彼女のいる広島まで行った。
本当にあの頃は彼女に狂っていた。
何日間か泊まり同棲気分を味わい、泣きながら福岡に帰った。

その時の一番したい事が「彼女といること」だったからそれはそれで後悔はない。

私も受験生になったがそんな状態で受験勉強なんて手に着かずセンター試験だけ受けて結局大学に行かなかった。

卒業後、私は親の事務所を手伝いながらフーテンのような生活をする事になった。私はこのまま何となく家継ぐんかもなぁとか思ったりしていた。
彼女は私の行く末を心配した。

そんな私でもようやくしたい事が見つかった。演劇だ。
色んな出会いもあり、東京に急遽行く事になった。

彼女は本当に喜んでくれた。彼女も就職で東京行きを選んだ。

私」は東京に来て演技の勉強に没頭した。
しかし、私が舞台中の事故で喉の骨折をしてしまい舞台にしばらく立てなってから、ただ東京の生活に飲み込まれ、何もしない時期が続いた。そんな中彼女も将来の事とか結婚の事とか考え不安になっていた。私もそんな彼女の空気を感じていた。

別れは突然だった。
良くある話だが、私は夢をあきらめられない、彼女は等身大の幸せな結婚、出産。


別れのときもメールと電話だった。「迎えに来てくれる?それとももう二度と一緒になることはない?」と聞かれ私は後者を選んだ。




カラオケを出るとスンドゥブを食べに行った。
目の前にいると複雑だが、あまり違和感がなかった。
不思議だ。
お互いの家族の話などした。


別れ際「家によってく?」と聞かれ一瞬なびいたが、「やめとくわ」と答えた。


さよならをして私は彼女が見えなくなると帽子を深くかぶり泣きながら歩いた。



※思い出なんで美化されてたり、都合の悪い部分は省いてたりしますがほとんどノンフィクションです。尻つぼみなのは時間がかかりすぎると思ったからです。