百三歳になったアトム  谷川俊太郎 

本日、池袋でPort Bの国民投票プロジェクトのときに紹介された谷川俊太郎さんの詩。谷川さんは鉄腕アトムの主題歌の詩を書いた詩人さん。
103歳になったアトムを想定した詩を書いていた。




百三歳になったアトム  谷川俊太郎 

人里離れた湖の岸辺でアトムは夕日を見ている
百三歳になったが顔は生れたときのままだ
鴉の群れがねぐらへ帰って行く

もう何度自分に問いかけたことだろう
ぼくには魂ってものがあるんだろうか
人並み以上の知性があるとしても
寅さんにだって負けないくらいの情があるとしても

いつだったかピーターパンに会ったとき言われた
きみおちんちんないんだって?
それって魂みたいなもの?
と問い返したらピーターは大笑いしたっけ

どこからかあの懐かしい主題歌が響いてくる
夕日ってきれいだなあとアトムは思う
だが気持ちはそれ以上どこへも行かない

ちょっとしたプログラムのバグなんだ多分
そう考えてアトムは両足のロケットを噴射して
夕日のかなたへと飛び立っていく


科学の子アトム。人間守る為に生まれた原子力で動くロボット。